通常レンズを接写可能なレンズにするためのアクセサリーを使ってどこまで被写体を大きく写せるか、を前回ご紹介しました。
今回は、その実験をして気が付いた点についてご紹介したいと思います。
色収差
色収差とは、ある1点を写したときに青、赤など色が別れてしまった状態で写った時のズレを言い、「色収差が出た」というように言います。
レンズの屈折率が色(光=電磁波の周波数)によって違うのが、色収差を起こす原因なのですが、普通のカメラレンズはレンズを何枚も組み合わせて(光学的に)色収差が発生しづらいように設計されています。
ところが、接写リングやクローズアップフィルターを使うと、色収差が盛大に出てしまう事が分かりました。
※画像クリックで拡大します
上の画像は、前回の記事で比較に使った画像を一部拡大したものです。
接写リングで撮った時の色収差
2段目の左側「MCEX-16 55mm f4」は接写リングを使ったものですが、こちらが比較的分かりやすいかと思います。
若干ですが「E」が青く、「R」の文字が赤色になっているのが分かるかと思います。
amazon – 接写リング – マクロエクステンションチューブ MCEX-16
クローズアップフィルターを使った時の色収差
この現象が顕著に出ているのが、3段目の左側「MC10 55mm f4」と書いてある画像です。
ピントの合っている2文字「E」が青寄りの色、「R」が青から赤へと変化しているのが分かるかと思います。
文字よりさらに下の部分、リングの凹凸が反射している箇所も、青~赤色になっているのが分かるかと思います。
amazon – クローズアップフィルター – KENKO MCクローズアップレンズNo.10
クローズアップフィルターについては、Kenko Tokina社も色収差の問題について分かっているようで、色収差を抑えた次の製品も展開しております。
amazon – Kenko カメラ用フィルター AC クローズアップレンズ No.5 58mm
こちらを使えば、もう少し色収差を抑えることは出来るのでしょうね。
ただ、こちらは画質優先のためか、No.10(撮影距離10cm)のものは製品化されておりません。
上の製品のように、No.5(撮影距離20cm)止まりのようです。
マクロレンズは今回試していないのですが、マクロ撮影用に特化していないレンズを今回のように使う場合は、ある程度画質が損なわれてしまう事を考えないといけないようです。
やはり値段相応、といったところでしょうね。
歪み
もう1つ。実験をしていて気が付いた点があります。
画像のゆがみです。
こちらの画像を見て頂けるとわかると思います。
※画像クリックで拡大表示になります
クローズアップフィルターを使った時の歪み
上の「MC10 35mm f22」と書いてある方ですが、上の白い部分(テーブルの端)が歪んでいるのが分かるかと思います。
amazon – クローズアップフィルター – KENKO MCクローズアップレンズNo.10
こちらの「クローズアップフィルター」を使ったものです。
接写リンクを使った時の歪み
下の「MCEX-16 35mm f22」は、写す方向が少し斜めになってしまっていますが、テーブル端の歪みは気にならないです。
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こちらの接写リングを使いました。
まとめ
色収差、歪み、どちらにおいても、「接写リング」の方が「クローズアップフィルター」に比べ画質が優っていると思われます。
接写リングの場合は、追加レンズを使っていない分、レンズ本来の性能に近い状態で使う事が出来るのだろう、と推測しております。
一方のクローズアップフィルターは、自前で簡易なレンズを持っている分、色収差、歪み、いずれの影響も出やすいのだろう、と思っております。
ただ、クローズアップフィルターは値段が3,000円程度と非常に安いため、これからマクロ撮影を試してみたい、という場合に練習用としてよいのかもしれませんね。
なにせ、専用のマクロレンズを買うのに比べ、10分の1以下の値段で買えますから。
もう一方の接写リングは、元のレンズに近い画質を得られるというメリットがありますが、クローズアップフィルターに比べ割高ですし(サードパーティー製だともっと安いものがありますが)、扱いも若干面倒ですし、使えないレンズもあったりします。
もちろんマクロレンズよりは十分安いので、もう少し画質に期待をしつつ使いたい場合に良い選択肢になると思います。
マクロレンズが充実していればこういった画質の問題で悩む必要はないのでしょうが、少なくともXマウントについては現行以下の2本しかラインナップがありませんので、悩みは尽きませんね。